2025年6月24日の東京市場は、週末に高まっていた地政学的リスクが一転して後退し、全面的なリスクオン(選好)ムードが広がりました。トランプ米大統領がイスラエルとイランの「完全な停戦合意」を発表したことが最大の好材料となり、投資家心理が大きく改善。前日のリスク回避姿勢から一気に巻き戻す形で、市場全体が上昇基調に転じました。
この停戦合意の報道により、東京株式市場では日経平均株価が4営業日ぶりに大幅反発。外国為替市場では「有事のドル買い」が一服し、安全資産とされる円が買い戻される展開となりました。また、原油価格は中東の供給懸念が後退したことを受けて急落するなど、商品市場でも大きな動きが見られました。
東京株式市場:停戦報道を好感し全面高、日経平均は436円高
24日の日経平均株価は、中東情勢の緊張緩和を好感した買い注文が優勢となり、前日比436円47銭高の3万8790円56銭で取引を終了しました。これは4営業日ぶりの上昇であり、投資家のリスク選好姿勢の強さを示しています。TOPIX(東証株価指数)も20.17ポイント高の2781.35となり、こちらも反発しました。
- 朝方には買いが先行し、上げ幅は一時600円を超え、節目の3万9000円に迫る場面もありました。
- 前日に大きく売られていた空運、非鉄金属、機械などの景気敏感株が幅広く買い戻されました。
- 一方、地政学的リスクの高まりで上昇していた防衛関連株や鉱業、石油関連株は利益確定の売りに押され、値を下げました。
- 半導体関連株も堅調で、特にレーザーテックは国内証券会社による投資判断の引き上げが好感され、急騰しました。これにより、同業種全体に物色の流れが波及しました。
為替市場:有事のドル買い一服、円は145円台まで反発
外国為替市場では、週末にかけて見られた「有事のドル買い」が中東情勢の緊張緩和により一気に巻き戻されました。これを受け、ドルは主要通貨に対して全面安となり、相対的に円が買い戻される展開に。
- ドル/円: 一時148円台まで上昇していたドル円相場は、停戦報道を受けて急反落し、一時145円台まで円高が進行。24日15時過ぎの時点では、145円台前半で推移しています。
- ユーロ/円: ユーロ円も前日の円全面安の流れが一服し、169円台前半での取引となりました。
- 背景: 市場の関心は再び日米の金融政策の方向性に移行。FRB(米連邦準備制度理事会)の一部高官からは7月の利下げを示唆する発言が相次いでおり、金利差縮小への期待からドル売り圧力が高まりました。一方、日銀は現時点で金融緩和スタンスを継続する姿勢を見せており、円安圧力との綱引きが続いています。
海外ニュース・商品市況:中東・エネルギー・地政学リスクの行方
- 中東情勢: トランプ米大統領が仲介したイスラエルとイランの12時間停戦合意が市場に好感された一方で、イランの外相が「合意は存在しない」とSNSで否定的な見解を示すなど、情報は錯綜。合意の実効性や持続性については依然として不透明な部分が残っています。市場では引き続き、後続の外交交渉や声明に注目が集まります。
- 原油価格: 中東の供給不安が和らいだことで、WTI原油先物価格は週末の78ドル台から一時68ドル台まで急落しました。原油価格の下落は、エネルギーコストの圧縮につながり、日本のようなエネルギー輸入国にとってインフレ圧力の低下、経済活動の下支えといった好影響が見込まれます。
- 米中関係: 米国が対中半導体規制をさらに強化するとの観測が続いており、ハイテクセクター全体の上値を抑える要因となっています。特に米中間のテクノロジー覇権争いの影響は、世界的なサプライチェーンに波及しており、引き続き注視が必要です。
- 欧州経済: ドイツIfo経済研究所が発表した6月の企業景況感指数は87.5と市場予想(88.1)を下回ったものの、前月の水準とほぼ横ばい。欧州経済の底打ち感が見えない中、今後の金融政策対応が注目されます。
今後の注目点と見通し
- 米国の経済指標: 本日この後、米国で6月の消費者信頼感指数が発表される予定です。米国経済の屋台骨である個人消費の動向を探る上で重要な指標であり、市場の期待と乖離があればボラティリティが高まる可能性もあります。
- 中東情勢の続報: 停戦合意が本格的に機能するかどうか、また継続的な和平プロセスに発展するかは今後の報道次第です。万が一、再度の衝突や合意の破綻があれば市場は再びリスク回避に傾く可能性があります。
- 金融政策: 今週は日米欧で経済指標の発表が続きます。インフレ指標やGDP成長率などの結果をもとに、中央銀行がどのような政策スタンスを取るかが次の相場の方向性を決定づける要因となるでしょう。
全体として、地政学リスクの後退に伴う安心感が広がった一方で、不確実性は完全には払拭されておらず、今後も市場の変動には注意が必要です。
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